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外国人ヘルパー訪問介護解禁のその後#1ミャンマー出身・ティンさんの場合

2026.05.26 Tue

外国人ヘルパーが訪問介護に解禁されて一年が経過。

介護業界では、外国人介護人材の存在感が高まっています。技能実習制度では2017年11月に介護職種が追加され、全国で受け入れが進んできました。

さらに2025年には、一定の要件を満たす外国人介護人材が訪問介護などの訪問系サービスにも従事できるようになりました。技能実習では2025年4月1日から、特定技能では2025年4月21日から認められています。ただし、実際には「訪問介護」といっても、サービス付き高齢者向け住宅など、施設に近い環境での支援が中心になっているケースも少なくありません。

制度として門戸が開かれた一方で、現場にはまだ慎重な見方もあります。令和5年度老人保健健康増進等事業の調査では、訪問系サービスにおける技能実習生の受け入れについて、受入れ法人の58.3%が「要件に関わらず、訪問系サービスでの受入れは難しい」と回答しました。「全てのサービス種別で受入れは可能」と答えた法人は13.5%にとどまっています。

それでもロジケアでは、利用者さんが普段暮らしているご自宅へ、ヘルパーが一人で訪問する本来の訪問介護の現場に、外国人ヘルパーが入っています。

もちろん、いきなり一人で現場に出るわけではありません。研修や同行訪問を重ね、本人の不安や利用者さんとの相性を確認しながら、少しずつ訪問の現場に入っていく。ロジケアでは、外国人ヘルパーが安心して働けることと、利用者さんが安心してサービスを受けられることの両方を大切にしてきました。

外国人ヘルパーは、利用者さんのご自宅でどのように受け入れられているのか。
ミャンマー出身のティンさんと、ロジケアろっこうみち管理者・豊田さんに、現場の実感を聞きました。

訪問介護員ティンさん(Myanmar)

「初めは少し不安。でも今は大丈夫です」

ティンさんが初めて利用者さんのご自宅を訪問したときは、先輩スタッフが同行しました。

「みんな優しくて、わからないことがあったらまた聞いてね、と利用者様からも言ってもらいました」

一人で訪問するようになってからも、わからないことがあれば利用者さんに直接確認しながら進めているそうです。もちろん、初めは不安もありました。

「初めはちょっと不安でした。でも今は大丈夫です」

訪問先までの移動は自転車。日本の道路や家の場所に慣れるまでは大変そうにも思えますが、ティンさんはスマートフォンを活用しながら訪問先へ向かっています。

「スマートフォンで探しながら行っているので大丈夫です」

一方で、ミャンマー出身のティンさんにとって、意外に大変なのは日本の暑さだといいます。

「寒い時は全然大丈夫です。暑い時がちょっとしんどいかなと思っています」

北海道の千歳で働いていた頃と比べても、神戸の夏は暑く感じるそうです。それでも、道に迷うことは少なくなり、今では自転車移動にも慣れてきました。

訪問介護員ティンさん(Myanmar)

利用者さんの「また来てね」が、仕事の励みになる

訪問介護では、利用者さんのご自宅に入り、生活に深く関わります。ティンさんは現在、身体介護や生活援助など、さまざまな仕事を担当しています。

利用者さんからは、うれしい言葉をかけてもらうこともあります。

「たまに『あなた優しいね』とか『また来てね』と言われる時があります。その時はすごくうれしくて、仕事も頑張らなきゃという気持ちになります」

施設介護と訪問介護で、利用者さんの接し方に大きな違いは感じていないそうです。

「施設の利用者様も優しいし、ここの利用者様も優しいです」

一方で、訪問介護ならではの難しさもあります。

「買い物代行がちょっと困っています。でも、わからない時はスマホで探しながら、『これで合っていますか?』と利用者様に聞きながらやっています」

日本の商品名や種類、容量。利用者さんごとのこだわりを理解することは、日本人ヘルパーにとっても容易ではありません。豊田さんも、買い物代行についてこう話します。

「日本人でも難しいです。こだわりのない方もいれば、こだわる方もいます。ただ、簡単なお弁当を買ってくるような内容は、ちゃんと聞き取りもされていますし、他のヘルパーさんとそんなに変わらないかなと思います」

できることを少しずつ増やしながら、ティンさんは訪問介護の仕事に慣れていっています。

訪問介護員ティンさん(Myanmar)

困った時は、事務所やリーダーにすぐ相談できる

訪問介護は基本的に一人で利用者さん宅を訪問する仕事です。だからこそ、困った時に相談できる体制があるかどうかは、とても重要です。

ティンさんは、わからないことがあれば先輩や豊田さん、事務所に電話して確認しています。

「困った時は、リーダーとか豊田さんに電話します。事務所に電話をかけたら、誰かが助けてくれます」

一人で訪問するからといって、一人で抱え込むわけではありません。現場では利用者さんと向き合い、必要な時には事務所や先輩スタッフとつながる。そうした仕組みが、ティンさんの安心につながっています。

豊田さんは、ティンさんの働きぶりについて「とても真面目です」と話します。

気づきも多いんです。もっと難しいかなと思っていたので、すごく意外でした。仕事も的確ですし、利用者さんへの接し方もとても丁寧です」

特に印象に残っているのは、利用者さんの状態がいつもと違った時の対応です。食事が取れておらず、状態も良くない利用者さんについて、ティンさんは必要な手順を踏み、看護師へ的確に連絡しました。

この時に連携を取ったのは、ロジケア社内の看護師ではなく、他事業所の看護師でした。社内のスタッフ同士であれば、普段から関係性や連絡の流れができています。しかし、他事業所との連携では、状況を正確に伝え、相手に必要な情報を過不足なく共有する力が求められます。

「ヘルパーとして報告しなければいけないこと、異変があったら看護に連絡することを、きちんとしてくれました。他業種にもちゃんと連絡が取れる。ケアマネさんから『ティンさんすごいね』と言っていただけたのが、私は一番うれしかったです」

ロジケアろっこうみち管理者 豊田氏

前職より収入が上がり、スキルアップにもつながっている

ロジケアに来てよかったことを尋ねると、ティンさんは「スキルアップ」と「学び」を挙げました。

「ここの仕事は、自分のスキルアップもできるし、いろいろ学ぶこともできます。日本の習慣とか、いろいろな方と会って学ぶこともできるし、言葉も学ぶことができます」

もう一つ、大きな変化は収入です。訪問に多く入れた月は、前職より月収が約7万円上がったこともあるといいます。

「この仕事は、自分が頑張れば頑張るほど稼ぐことができます。自分が行きたい、頑張りたいと言ったら、もっと稼ぐことができるので、よかったと思っています」

もちろん、たくさん働けば体力的にしんどい時もあります。ティンさんは「休む時はちゃんと休んでいます」と話しますが、管理者の豊田さんは、そこを注意深く見守っています。

「働きたい、稼ぎたいという部分をきちんと確保していくのは、私の仕事だと思っています。ただ、行けますかと聞くと必ず『行けます』と言ってくれるので、無理していないかなというのは気になります」

実際に、しんどいと伝えてくれた時には、シフトを外すなどの調整も行っています。稼ぎたい気持ちを尊重しながら、無理をしすぎないように支えること。それも受け入れ側に求められる大切な役割です。

外国人ヘルパーを受け入れる時、管理者が感じていた不安

豊田さんは、ティンさんを受け入れる前、正直な不安もあったと話します。

「外国人の方を家に迎え入れること、しかも1対1という部分の受け入れはどうなのかな、大丈夫なのかなというのは正直ありました」

実際、最初は「外国人の方はうちはいいわ」と否定的な利用者さんもいたそうです。しかし、同行訪問でティンさん本人に会うと、反応が変わることもありました。

「彼女自身を見ていただいたら、『かわいい子やね、全然うち来て』という形で、ご利用者様の反応が私が思っていたものとは違いました」

もちろん、すべての利用者さんに同じように受け入れてもらえるわけではありません。豊田さんは、ティンさんが安心して力を発揮できるよう、訪問先の選定にも配慮しています。

たとえば、細かい要望の対応が求められるケースや、物盗られ妄想がある方のご自宅、お金がそのまま置かれているなど誤解が生まれやすい環境では、無理に一人で担当させないようにしています。

本人が何もしていなくても、環境によっては誤解を受けてしまう可能性があります。そうしたリスクを事前に見極めることも、受け入れ側の大切な役割です。

一方で、こだわりが強く難しいケースでも、学ぶ価値があり、本人の成長につながると判断した場合は、同行を重ねながら少しずつ挑戦できるようにしています。

「難しいけれど、行けるようになってほしいケースもあります。何度か同行を組ませていただいて、一生懸命学ぶ姿勢もありますし、すごく頼もしいです」

訪問介護員ティンさん(Myanmar)

「精神的に安心して働ける」ロジケアの職場環境

同じように日本で介護の仕事をしているミャンマー出身の友人に、ロジケアの良さを伝えるなら。ティンさんがまず挙げたのは、「みんなが優しい」ということでした。

「ここではみんなが優しくて、社長もすごく優しくて、働いているみんなも若くて優しいです」

前職でティンさん自身がいじめを受けたことはありませんが、同じように日本で介護職として働く友人から、職場で心ない対応を受けたという話を聞くことがあるそうです。

だからこそ、困った時に相談できる環境があることは、ティンさんにとって大きな安心につながっています。

「ここではそういうことがないです。もし不当な扱いを受けたら、社長とか部長とかリーダーに相談できるので、精神的に安心して働けると思います」

施設介護には、近くに先輩がいてすぐに聞ける良さがあります。一方で、人間関係の距離が近いからこその難しさもあります。訪問介護は基本的に一人で動く仕事ですが、利用者さんをチームで支える仕組みがあります。

「訪問介護は基本一人ですけど、利用者様はチームでケアしている。その部分が彼女にはよかったのかもしれないですね」

訪問介護員ティンさん(Myanmar)

休日は勉強、買い物、友人と観光。神戸で暮らす楽しみも増えた

休日の過ごし方を聞くと、ティンさんは「勉強したり、買い物に行ったり、家の家事をしたりしています」と話します。

時には、ミャンマー出身の友人と大阪や神戸、京都へ観光に出かけることもあります。北海道の千歳にいた頃より、神戸周辺には昔からの友人が多く、会いやすくなったそう。

また、神戸周辺にはミャンマーの食材や調味料を買えるお店もあります。仕事だけでなく、暮らしの面でも安心できる環境があることは、外国人介護人材が長く働くうえで大切な要素です。

収入が増えた分は、家族への仕送りだけでなく、自分のスキルアップや旅行、食事にも使っています。

「家族のために仕送りもしていますし、自分のためにも使っています。介護福祉士の授業とか、食べ物とか旅行にも使っています」

以前のインタビューで語っていた「自分の夢も、家族も。両方です」という思いを、今の働き方で少しずつ実現しています。

訪問介護員ティンさん(Myanmar)

目標は介護福祉士。日本で長く働きたい

「介護福祉士を取って、日本で長い期間働きたいです」

ティンさんのこれからの目標は、介護福祉士の資格を取ること。介護福祉士国家試験は、日本語で行われます。外国人介護人材にとって、介護の専門知識だけでなく、日本語の読解力も求められる難しい試験です。介護福祉士の受験資格は、日本人と同じく実務経験3年以上と実務者研修の修了が基本となります。

ティンさん自身も、「外国人にとってはすごく難しいと思います」と話します。それでも、実務者研修や介護福祉士の勉強に真剣に取り組んでいます。

豊田さんも、その姿を応援しています。

「実務者研修があって、次に介護福祉士の試験があって、すごく真剣に取り組まれています。そこも応援したいです。
私の中では、ずっといてほしいと思っています。頼もしいので」

外国人ヘルパーが、利用者さんのご自宅を一人で訪問する。受け入れ前には、利用者さんに受け入れてもらえるのか、日本語で細かなニュアンスまで伝わるのか、困った時に一人で抱え込まないかといった不安もありました。

しかし実際には、ティンさんは利用者さんから「また来てね」と声をかけられ、ケアマネジャーからも評価される存在になっています。もちろん、業務の難しさや、訪問先ごとの相性、体調面への配慮など、乗り越えるべき課題がないわけではありません。

それでも、同行や相談、訪問先の選定、チームでの情報共有を重ねながら、一つずつ対応してきました。

心配していたことばかりが起きているのではなく、むしろ現場では、利用者さんに受け入れられ、できる仕事を増やしながら、順調に経験を積んでいる。

ティンさんの姿は、外国人ヘルパーが本来の訪問介護の現場で活躍できる可能性を示しています。

訪問介護員ティンさん(Myanmar)