つながり
事業所だより・
イベントレポート
2026.10.15 Thu
2026年10月10日。神戸市で新たに誕生した中学生の吹奏楽クラブが、発足から約1か月で演奏会を迎えました。
楽器の調達、練習場所の確保、運搬の手配。何もかもが手探りで、指導する側も支える側も走りながら考える日々が続いています。
この新しい吹奏楽クラブを支援しているのが、在宅介護・看護サービスを展開する株式会社ロジケアです。
一見、介護と吹奏楽に接点はなさそうですが、そこには子どもたちの活動を地域で支えたいという思いがありました。

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2026年9月、神戸市で「KOBE◆KATSU(コベカツ)」がスタートしました。
これまで学校が担ってきた中学校の部活動を、地域の団体や指導者が運営するクラブ活動へと転換する、新しい取り組みです。
背景にあるのは、少子化による部員数の減少や教員の負担、子どもたちの興味・関心の多様化。従来の学校単位の部活動だけでは、活動の選択肢を維持することが難しくなりつつあります。
こうした課題を受け、全国でも部活動の地域展開が進められています。
コベカツでは学校の枠を越え、自分のやりたい活動を選べるようになります。一方で、これまで当たり前にあった部活動を誰が、どのように引き継いでいくのか。
まさに、その答えを地域全体で探しているところです。

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神戸市で中学生の吹奏楽クラブを立ち上げたのは、アウフタクトという団体です。
およそ10年前、神戸に小学生の吹奏楽団がなかったことから、寄付を募り、SNSで仲間を集め、ゼロから「神戸ジュニア吹奏楽団パレット」を立ち上げました。
そして今回、中学校の部活動が地域へ移ると聞き、中学生の受け皿づくりにも乗り出したのです。
「中学生の吹奏楽もなくなるんだったら、そりゃやらなくちゃですね」
そう語るのは、アウフタクト代表の山下さん。
実はロジケア代表の佐野とアウフタクトには、以前からつながりがありました。
佐野の息子が「パレット」の団員として活動しており、佐野自身も楽器の運搬を手伝った経験があったのです。
「僕自身、中学校の思い出は部活しか覚えていないぐらい」
佐野にとって、部活動は特別なものでした。だからこそ、自分が夢中になれた場所を、今の子どもたちにも残したい。
コベカツの話を聞いて山下さんに相談したところ、すでにアウフタクトが動き始めていることを知りました。
それならば、実績とノウハウのある団体を、ロジケアが後方から支えよう。こうして支援が始まりました。

学校教員ではなく地域の音楽専門の指導者がタクトを振る
2026年9月、アウフタクトは二つの吹奏楽クラブを立ち上げました。
一つは、東灘区の御影中学校を拠点とする「ブラスコード御影」。従来の吹奏楽部を引き継ぎ、新しい地域クラブとしてスタートしました。
もう一つは、灘区の原田中学校を拠点とする「灘ユースウインド『カラフル』」。こちらはゼロからの立ち上げです。
原田中学校にあったのは、一般的な吹奏楽部ではなくジャズバンド。学校にある楽器もサックスやトロンボーン、ドラムなどが中心で、フルートやクラリネットはありません。
しかも、使用できる音楽室は通常の教室ほどの広さ。合奏には手狭で、別の練習場所を確保する必要がありました。
発足から約1か月。立ち上げの感想を尋ねると、山下さんから返ってきたのは、実に率直な言葉でした。
「大変です」
学校の楽器を修理に出したいとき。演奏会のために学校から持ち出したいとき。あるいは、活動場所の鍵を誰が管理するのか。
一つひとつに確認や調整が必要です。
学校側も運営団体側も、新しい仕組みの中で適切な方法を探っている段階。これまでの部活動では意識する必要のなかった問題が次々と出てきます。
会費の徴収や保険加入、保護者への説明も欠かせません。従来の部活動とは異なり、地域クラブでは原則として会費が必要です。活動時間も変わるため、塾や習い事との兼ね合いから参加を見送る家庭もあります。
8月に体験会を実施したものの、当時は学校の楽器をまだ使えず、アウフタクトが用意した楽器で対応しました。
生徒を募集したい。けれど、楽器も場所も運営方法も、すべてが整っているわけではない。
まさに試行錯誤の連続。それでも、子どもたちに演奏の場を残したいという思いは変わりません。

そんな現場を、ロジケアは資金面と実務面の両方からサポートしています。
楽団のロゴ制作をはじめ、クラブのTシャツや演奏時に使用する譜面隠しなどの制作を支援。さらに、大型楽器を運ぶためのハイエースも用意し、車体にはロゴを掲出しました。
吹奏楽に欠かせないのが楽器の運搬です。
チューバや打楽器など、大きく重い楽器を演奏会場へ運ぶには、相応の車両と人手が必要になります。
演奏会が決まっても、楽器をどう運ぶかが決まっていない。そんな場面もあります。
華やかなステージの裏側には、こうした地道な準備があるのです。
費用面での支援も重要です。吹奏楽は楽器だけでなく、マウスピースやリードなどの消耗品にも費用がかかります。
アウフタクトでは家庭の負担を抑えるため、こうした消耗品を楽団から支給しています。ロジケアによる支援は、その運営を支える力にもなっています。
保護者や指導者の頑張りだけに頼るのではなく、地域の企業も力を出し合うこと。
企業による文化・芸術支援、いわゆる「メセナ活動」は、子どもたちの音楽を地域で守り、育てていくための一つの方法です。

クラブのロゴを貼り付けた社用車
準備に追われながらスタートした吹奏楽クラブですが、10月10日には演奏会が開催されました。
発足から、わずか1か月ほど。
楽譜に一音ずつ「ドレミ」を書き込む生徒もいれば、楽器を始めたばかりの生徒もいます。それぞれの経験も、技量も違います。
それでも、一緒に音を出し、ひとつの曲をつくり上げていく。
山下さんによると、新しいクラブに参加している生徒たちは、吹奏楽への意欲がとても高いそうです。
山下さんは、音楽の魅力をこう語ります。
「私は音楽っていうのはコミュニケーションだと思っていて」
相手の音を聴き、自分の音を重ね、互いの呼吸を感じながら演奏する。それは、まるで会話のようなやり取りです。
「何も喋らなくても一緒に仲間になれる、居場所になれるよ」
技術の習得や大会での成績だけではない。仲間と過ごす時間、好きなことに夢中になる経験、学校の教室とは違う自分の居場所。
吹奏楽には、そんな大切な役割もあるのです。

2026年10月10日(土)イベント「キセキの十月十日(とつきとおか)〜生きるを大切に〜」at 神戸ハーバーランド・デュオドーム
部活動の地域移行は、まだ始まったばかりです。
佐野は、今回の取り組みで得られた経験が、これから地域展開を進める全国の自治体や団体にとって、一つの参考事例になればと考えています。
うまくいったことも、難しかったことも共有していく。その積み重ねが、次の地域で活動を始める人たちの助けになるかもしれません。
在宅介護・看護を通じて地域の暮らしを支えるロジケアにとって、今回の吹奏楽クラブへの支援は、地域との関わりを文化・芸術の分野にも広げる取り組みです。
専門的な指導を担う人、学校や保護者、活動を資金面や実務面で支える企業。それぞれが役割を持ち寄ることで、これまでとは違う部活動の形が生まれようとしています。
まだ課題は山積み。それでも、子どもたちの演奏は始まりました。
ロジケアはこれからも、地域の人々とともに、その音楽が続いていくための活動を支えていきます。
