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インタビュー・
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訪問現場で起きる「急変」のリアル [後編]「一人で抱え込まない」ための仕組み──ヘルパー・看護師・ケアマネTALK SESSION

2026.01.26 Mon

前編では、訪問時に起きる「急変」の現実と、
その場で生まれる戸惑いや緊張感を見てきました。
では、その不安を現場ではどのように支えているのでしょうか。
一人で訪問に行く仕事で、なぜ「一人じゃない」と言えるのでしょうか。後編では、ロジケアの現場で当たり前のように行われている
職種を越えた連携や日常の情報共有、
そして新人や若手を支える仕組みについて掘り下げていきます。

水野 美和氏 ケアマネジャー

訪問介護員からサービス提供責任者、ケアマネージャーへステップアップ。ヘルパー歴14年、ケアマネジャー歴7年、ロジケア歴10年。

上垣 愛紀 氏  訪問介護員/サービス提供責任者

特養・デイサービスで介護士を経験のちロジケアへ。現在はサービス提供責任者としてロジケアあしやで勤続4年。

上本 啓子氏 看護師

神戸大学医学部付属病院で勤務のち、ロジケアあしやで勤続7年。

ロジケアの「連携の強さ」

記者

ケアマネさんから見て、ヘルパーさんや看護師さんが
普段から連携して働いている中で、
「ここが頼りになる」と感じるのはどんなところですか?

水野/CM

看護師さんは、やっぱり医療知識ですね。
もうそれに尽きます。

先生からのお手紙を見ても、「これ、何書いてるんやろ?」って
正直わからないこともある。そういう時に「これはどういう意味ですか?」って、すぐ聞ける。

お薬のこともそうですし、医療的な判断はやっぱり看護師さんがいてくれるのは大きいです。

ヘルパーさんに関しては、日常のことを一番よく知ってくれてる存在ですね。
ケアマネは基本、月に1回の訪問なので、日々の細かい変化まではなかなか見えない。
だから
「最近ちょっと元気ないです」
「この間までできてたことが、できにくくなってます」
そういう情報をもらえるのは本当に大きいです。

記者

では、看護師さんから見て、ヘルパーさんの動き方はどう見えていますか?

上本/Ns

ヘルパーさんは、看護よりも訪問回数が多い場合がほとんどなので、
意外と私たちが知らない情報を持ってることが多いんです。

「そんなことあったんや」とか、「そこ、気づいてなかったな」って思うこともある。
そういう情報は、すごく参考になります。

記者

では、ヘルパーさんから見てはどうでしょう?

上垣/サ責

ヘルパーの役割は、とにかく日常の観察やと思っています。

何かあった時にすぐつなげられるように、普段の様子を知っておく。
それは、現場に入るヘルパーみんなに伝えています。

その上で、「これ、どうしたらいいですか?」って聞いた時に、
すぐ専門的な返事が返ってくる。
看護師さんに聞いたら医療的な視点で返ってくるし、
ケアマネさんに相談したら「じゃあ、こうしよう」って
次の動きがすぐ決まる。

それができる環境って、実は当たり前じゃないと思ってます。

グループLINEがつないでいるもの

水野/CM

ロジケアは、介護・看護・ケアマネ・福祉用具が
同じグループLINEでつながってるのが大きいです。

ちょっとしたことでも、一回投げたら、必要な人に全部伝わる。

上垣/サ責

他所の看護ステーションが入ってると、
「どこの看護師さんやっけ?」
「電話番号どこやったっけ?」
って調べるところから始まることが多いんですよね。

水野/CM

つながる頃には、もう夕方、ってこともある。

上垣/サ責

その点、ロジケアは
「うちの看護さん」ってわかってるから、すぐ動ける。

上本/Ns

電話番号を探さなくていい、
誰に伝えたらいいか迷わない。
それだけでも、現場の負担は全然違います。

水野/CM

しかも、
「昨日こんな様子でしたよ」
「この間、食欲ありました」
そういう小さい情報も、グループLINEにポンと出せる。

上垣/サ責

それが次の判断につながるんですよね。

水野/CM

いちいち改まって報告書を書くほどじゃないけど、でも大事な情報。
それが自然に共有できるのが、ロジケアの連携の強さやと思います。

看護・ヘルパー・ケアマネで「次の一手」をそろえる

記者

日頃から「これどうしたらいいんやろ?」みたいな相談ってありますか?

上垣/サ責

そうですね。そういうのはちゃんと聞いてますよね。「これ、どうしたらいいですか?」って。
疑問を疑問のまま残すことは、あんまりない気がします。

どうしようって思った時に、看護師さんにもケアマネさんにも、すぐに聞ける環境がある。

水野/CM

そうやね。介護、看護から提案をしてくれるんですよね。
「こういう風にしたらどうですか?」とか。それがあると、話を広げやすい。

例えば、この方、ずっと家に引きこもってるな、ちょっと気力が落ちてきてるな、
そう感じた時は、看護・ヘルパー・ケアマネで一回話をします。

「最近ずっと家にこもりがちやし、
デイサービスを勧めてみたらどうでしょう?」って方向がそろったら、
私だけじゃなくて、看護師さんも、ヘルパーさんも、
みんなで同じ方向で声かけをするんです。

上垣/サ責

連携プレーですね。

水野/CM

そう。
次に誰が行った時にどう言うか、「じゃあ次はこっちが行った時に、こう話そうか」って。

利用者さんって、自分でパッと決められる人ばかりじゃないんですよね。
ちょっと決めきれへんな、とか、気力が落ちてきてるな、っていう方こそ、
周りが支えて、背中を押していく。

それを日常的にできるのは、やっぱり普段から連携してるからやと思います。

上垣/サ責

こういう話、日頃からしてますよね。
多いですね。

日頃からの備えが、急変時を支える

上本/Ns

在宅に来て一番困ったのは、
病院みたいにカルテや検査データがそろっていないことでした。

契約はしているけど、まだ初回訪問が済んでいない段階で
「今すぐ行ってください」と呼ばれることもあります。

そういう時って、普段の状態がわからないんですよね。

例えば、転倒したって聞いて行っても、その歩き方が異常なのか、
もともとびっこを引いて歩く人なのかが判断しにくい。

緊急で呼ばれて、一度も行ったことがない利用者さんのところに行くこともありますし、
救急隊の人から「普段はどんな様子ですか?」ってすごく聞かれても、
「さあ……」ってなってしまうことも正直あります。

上垣/サ責

ある。確かにそうですね。

上本/Ns

だから、できるだけ訪問時の記録は詳しく書くようにしています。
飲んでいる薬、入院歴、どこの病院にかかっていたか。

でも、独居で認知症の方やと、
その病歴自体があやふやなことも多いんですよね。

水野/CM

あるよね。何か病歴があるとは思うけど、
書いてなかったりしますよね。

上本/Ns

情報が少ないと、急変した時に、例えばお腹が痛いって言ったら
「これかもしれん」「あれかもしれん」って
病歴から考える材料が少なくなってしまう。

もちろん診断するのは医師ですけど、私たちもある程度、
「こういう可能性があるかもしれない」って
考えながら動かないといけない。

病院なら、カルテもあるし、検査データもあるし、画像もある。
何かあった時に「あ、これじゃないかな」って判断の引き出しがたくさんある。

でも在宅は、そもそも情報がなさすぎる。
それが、在宅に来て一番最初に困ったところです。

水野/CM

家族さんに聞いても
「わかりません」って言われること、ありますしね。

上垣/サ責

家族さんが病歴や投薬の内容を把握しきれてないパターン、結構あります。

水野/CM

昨日もありました。
血液サラサラの薬を飲んでるって言うから
「脳梗塞は?」って聞いたら「やってないです」って。

でも、先生の入退院サマリーを見ると
脳梗塞って書いてあったり

上本/Ns

連携している病院があって、診療情報を回してくれる場合は、
過去の病歴やデータがわかるんですけど、
そういうのが全くない方もいます。

搬送する時も、できるだけ
カルテが残っている病院を優先的に打診してもらいます。

どこに運ばれるかで、その後の対応が全然違ってくるので。

何気ない会話が、いちばんの情報になる

水野/CM

だからこそ、日頃の情報共有が本当に大事なんですよね。

改まった報告じゃなくて、
すれ違いざまに「この間、こんなこと仰ってましたよ」とか。

上垣/サ責

そこから次につながることも多いです。

水野/CM

それも一つの情報なんで。

FAXでちゃんとした報告を出すほどじゃなくても、
「気に留めたこと」をポロッと言える。

「昨日なんだかんだ食べて、元気そうでしたよ」
「この間はしんどそうやったけど、今日は大丈夫そうでした」

そんな一言が、
看護師さんにも、ケアマネにも伝わって、情報が回っていく。

上垣/サ責

ちっちゃい情報ですけど、
ちゃんと共有できますもんね。

水野/CM

いちいち堅苦しくならなくていい。
それが、ロジケアのいいところやと思います。

上垣/サ責

意外と、
「病院行って疲れたらしいですよ」
みたいな一言が大事やったりしますしね。

水野/CM

そうそう。

若いスタッフでも、そういうことが自然に言えるようになると、
たぶん気持ち的にも、すごく楽になると思います。

私たちは、そういう情報を待ってる側なんで。

上垣/サ責

情報は、多い方がいいですからね。

上本/Ns

「昨日、こんな様子でしたよ」
それだけで、全然違います。

焦らない、抱え込まない、現場でつなぐ

記者

看護師さんから見て、
医療知識がないヘルパーさんや、これから訪問に出る若い人に、
「これだけは覚えておいてほしい」という
アドバイスはありますか?

上本/Ns

まずは、焦らないことですね。

この間も外国人のヘルパーさんにも言ったんですけど、
「焦らないで、まず状況を確認する」
それが一番大事です。

上垣/サ責

焦ると、ほんまに状況が見えてこなくなりますからね。

上本/Ns

それから、上司に報告すること。
ヘルパーさんにやってほしいことは、大きく分けると三つです。

・焦らない
・状況を確認する
・上司に報告する

よくあるのが、
「なんかしんどそうです」とか
「薬を飲み忘れてるみたいです」
って電話だけもらうケースなんですけど、
それだけやと、こっちも正直判断が難しい。

例えば、お薬カレンダーの写真とか、
どこから血が出てるのかがわかる写真とか、
そういう情報があると、判断しやすくなります。

上垣/サ責

お薬カレンダーの写真、助かりますよね。

上本/Ns

「今日のところに薬が入ってません」って言われても、
もう飲んだのか、別のところから飲んだのか、わからない。

でも写真があれば、
「あ、ここから取ったんやな」ってわかる。
そうしたら
「今日はもう飲まなくていいよ」とか
「朝の分から飲んでください」とか、
具体的な指示が出せます。

 

あと、
一度退室してから
「さっきの利用者さんなんですけど
って連絡をもらうこともあるんですけど、
それやと、できることが限られてしまう。

忙しいのはわかってますけど、
できるだけ現場にいる時に、
写真や状況を添えて連絡してもらえると、
こちらも指示を出しやすいですね。

記者

サ―ビス提供責任者の立場から、
現場の若い人にどんな指示を出していますか?

上垣/サ責

まずは、
「どういう状況かを説明してもらう」ことですね。

こけたのか、熱があるのか、
とにかく今、その人がどういう状態か。

その情報がないと、
私たちも次にどう動くか判断できないので、
「まずは情報収集してください」って伝えます。

転倒してるなら、下手に動かさないこと。

熱が出てるだけなら、
家にあるものでクーリングして、
少し様子を見る、という判断もあります。

転倒の場合は、
どこで倒れているのか
本人は喋れるのか
明らかな傷はないか
今すぐ起こせそうかどうか

そういうところを、
現場にいるヘルパーさんに、きっちり確認します。

ベテランさんならテキパキ動けるんですけど、
若い子はどうしても気が動転してしまう。

だから、
「大丈夫だよ」
「落ち着いていこう」
っていう声掛けから始めます。

そこも、すごく大事やと思ってます。

水野/CM

ヘルパーさんは、
何かを決めなあかん立場じゃないと思ってます。

現場で見たこと、気になったことを、
そのまま教えてもらえたら、それでいい。

それをもとに、
私が家族さんに連絡したり、
看護師さんに相談したり、
「じゃあこうしようか」って、
次を考えるのがケアマネの役割やと思ってます。

訪問は一人で行くけど、
一人で何とかする仕事ではない。

困った時は、
「これ、どうしたらいいですか?」って
聞いてもらえたらいい。

私らは、
そういう連絡を待ってる側なんで。